消費税の仕組み

消費税は基本的に一般の消費者が負担する税金です。
普段の買い物をした時に8%が上乗せされるのはご承知の通りです。

ではその8%分を受け取ったお店側はどうするのでしょうか?
その受け取った消費税の取扱いなど、事業者の方の消費税の仕組みを解説していきます。

事業者の消費税

基本的な考え方として、事業者の方はお客様からいただいた消費税を国に納めます。

例外はありますが、この考え方が出発点になっています。

あくまでも負担をするのは、買い物をした一般消費者です。

消費税が存在しない場合

では事業者の方はどのような計算や手続きをするのでしょうか?

一つづつ順を追って見ていきます。

そこで仮に消費税が日本に存在しなかったと仮定します。

あるお店がお弁当を仕入れて店頭で売るとして、

売上10,000円

仕入6,000円

とすると利益は4,000円です。

1年間でこれしか取引をしていないことにします。

以上の計算を前提とするので覚えておいて下さい。

売上の消費税

しかし実際には消費税がかかるので、お店側がお客さんからいただくお金は10,800円です。

納税義務

この場合の消費税800円は、お店が国に納めなければなりません。

これが消費税法のルールです。

そして全ての計算の核になります。

これはしっかりと覚えておいて下さい。

消費税の800円を、お客さん代わって国に納めたのです。

仕入の消費税

一方仕入はどうなるのでしょうか?

仕入にも消費税はかかるので仕入業者へ支払うお金は6,480円です。

お金に印を付けたら

本来お金には細工をしてはいけません。

しかしここでは仮定として、お金にお店の印を付けておくとします。

さきほどの仕入れの際に支払った消費税480円に、お店のマークをつけておくとします。

仕入業者はどうするのか?

では仕入業者では6,480円をどのように扱うのでしょうか?

まず仕入側では6,480円は売上となります。

ここまでは問題ないと思います。

再び納税義務

ここでもう一度思い出していただきたいのですが、売上の際にお客さんからいただいた消費税は国に納めるというルールがありました。

だから仕入業者も6,480円のうち480円は国に納めなければいけないのです。

印のついたお金はどこへ?

ではお店の印を付けた480円はどうなってしまったのでしょうか?

整理してみましょう。

まず仕入の際に、仕入業者に6,480円渡しています。

そのうち消費税分の480円にはお店の印を付けてあります。

ここまでは問題ないと思います。

そして仕入業者は売上の際にいただいた消費税を国に納めるので、その印がついた480円は国に納められることになります。

消費税を納付したことになる

以上の話しの流れから、お店のマークを付けた480円は、仕入業者を通して国に納められました。

これはお店が納めたと考えていいのです。

ここは慣れないとピンとこないところかもしれませんが、お店は仕入業者を通して国に消費税を納めたのです。

さきほどの一般消費者の例で言えば、お客さんはお店を通して国に消費税を納めたのと同じことです。

証拠は?

本来、国に税金を納めたのであれば、銀行に納付書をもっていき、銀行の収受印を押してもらって、これを証拠とします。

しかし消費税の場合は、これまでの話しの通り、自分以外の者が消費税を納めることもあるのです。

一般消費者から見れば、お店が代わりに納めてくれます。

お店から見れば、仕入業者が代わりに納めてくれます。

よって銀行は全く関係ないので、税金を納めた証拠は領収書や請求書になるのです。

これが消費税法の特徴的なところであり、非常に大切なことになります。

消費税の核

ここで消費税の根本的なルールを思い出してほしいのですが、お客さんからいただいた消費税は国に納めることでした。

上記の例で言えば800円を納めなければいけないのです。

払いすぎ

しかし実際には仕入れの際にも仕入業者を通して国に消費税を支払っています。

つまりお店の印を付けた480円は消費税として国に支払っているのです。

実はこのままでは払いすぎになるのです。

もう一度述べますが、事業者はお客さんからいただいた消費税を国に納めなければいけません。

ですから国に納める消費税は最大で800円なのです。

仕入業者を通して支払った消費税480円も含めると1,280円支払ったことになってしまい、払いすぎになってしまうのです。

不合理を解消する方法

ではこの不合理を解消するにはどうすればいいのでしょうか?

結論から言えば、仕入業者を通して支払った消費税480円は、国に納めるべき消費税の頭金と考えます。

大切な考え方

ここが非常に大切なところなのですが、本来国に納めるべき消費税は800円でした。

しかし仕入業者を通して480円の消費税を頭金として既に支払済みなのです。

証拠はあります。

領収書や請求書です。

これをもって国に支払ったことにしてよかったのでした。

だとすれば、もうお分かりかもしれませんが、事業者の方が国に支払うべき消費税は、残りの320円となります。

計算の整理

ここでもう一度計算を整理しておくと、本来はお客さんからいただいた800円を国に納めなければいけないのです。

しかし頭金として480円をすでに仕入業者を通して国に支払っているのです。

よって国に納めるべき消費税は800円ー480円で、320円となるのです。

公式

以上の話しから一つの公式が導き出せます。

結論としては、納めるべき消費税=「預かった消費税ー支払った消費税」となります。

数字で表せば、800円ー480円=320円として、320円を国に納める計算になります。

お客様からいただいた消費税は国に納めるものなので、正確には「預かった消費税」と言えます。

トータルでの納付額

駄目押しで確認をしておきますが、上記の例で320円を国に納めることになりました。

しかし仕入業者を通して480円の消費税は既に国へ支払済みなので、トータルでは800円の消費税を国に支払っています。

これで全てつじつまが合います。

もともとお客様から預かった800円の消費税は国へ納めたことになるのです。

確定申告

これらの計算は確定申告として申告書を提出し、国へ消費税を納めることになります。

よって消費税の計算では頭金を引くことが非常に大切なのです。

そしてその頭金を証明する領収書や請求書は重要な書類となり、また帳簿へ必要事項を記載することも厳しく求められています。

国からしてみれば、頭金をごまかされると一般消費者が支払った消費税が不当に消えてしまうので、厳格な取扱いを求めているのです。

事業者の利益は?

ところで事業者の方の利益はどうなるのでしょうか?

ここまで来ればそれほど難しくありません。

まずお客様からの入金は10,800円です。

仕入による出金は6,480円です。

国に確定申告で納める消費税は320円です。

全てをまとめると、

10,800ー6,480-320=4,000 となります。

冒頭で述べた消費税が日本に存在しない場合と一致します。

事業者の消費税

商品やサービスには消費税のかからないものもありますが、消費税がかかるものを前提に考えれば、事業者の方は消費税で損も得もしません。

上記の例で利益が、消費税が存在しない場合の4,000円と一致したことでお分かりいただけますでしょうか。

シンプルな例

これはシンプルな例で完全に理解できます。

例えば何かのアドバイスをするサービスをしているとします。

価格は40,000円です。

実際には消費税分として3,200円も含めてお客様からいただくことになります。(43,200円)

そしてルールによって、この3,200円は国へ納めます。

1年間でこれしか取引をしていなかったとします。

この場合は手元に残る利益は40,000円です。

公式に当てはめれば3,200ー0=3,200 が国へ納める消費税です。

もし消費税が日本に存在しないのであれば、手元に残る利益はやはり40,000円です。

損をする人得をする人

このように事業者の方は消費税で損も得もしないことになります。

では損をするのは・・・一般消費者です。

得をするのは・・・国です。

ということで、事業者の方は税金をかき集めるのに利用されているだけなのです。

領収書を一所懸命集計して確定申告書を作成して、規模が大きくなってくれば税理士に報酬を支払って・・・この話しはここで止めておきましょう。

損が出たら

このお弁当を売るお店の例で、もしお弁当が売れなかったために、赤字覚悟で大安売りをしたらどうなるのでしょうか?

例えば4,000円で売ったとします。

預かる消費税は320円です。

しかし仕入業者を通して国へ支払った消費税は480円です。

本来納めるべき消費税は320円、しかし頭金で480円支払っている状態です。

実はこの差額160円は国から返してもらえます。

公式に当てはめれば320-480=-160 となり、マイナスになってしまう分は還付となります。

還付にはなるが

しかし還付といっても、結局損も得もしていません。

本来は320円を納めなければいけないのです。

しかし頭金を払いすぎていれば返してもらうのは当然です。

例えば100万円の車を買うとします。

まずは頭金を払ってほしいと言われ、間違って120万円振り込んでしまったら、「20万円払いすぎでした、返して下さい。」と言うでしょう。

それで20万円を返してもらっても、その20万円については損も得もしていません。

一時的に払ったものが全額戻ってきただけです。

極端に言えば、預金をしてその後で引き出した場合と同じです。

全体像の一部

今までの話しは消費税法の一部です。

実際はもっと複雑な部分もありますが、まずは事業をされるに当たって以上の仕組みを理解しておくことが最低限の基礎知識になります。

なお消費税は、実は事業者によっては確定申告書を出せない場合等もあります。

出せないので納める必要はなくなりますが、還付を受けようとしても受けられなくなります。

このような応用的な話しは消費税の仕組み2をご覧下さい。