相続税とは、人の死亡により相続人が財産を引き継ぐ場合に課税される税金です。
だったら生前に財産を移しておけば相続税は払わなくてもいいのでは?
と考えることが普通かもしれません。
ただし生前の財産の移転には贈与税がかかり、相続税よりも重い負担となっています。
つまり贈与税は相続税逃れを防止するストッパーの役割りをしているのです。
しかし贈与税にも若干の隙があります。
ここを突いて何とか相続税を減らすことができないか考えてみましょう。
具体的には、贈与税では1年間で110万円までは課税されないことになっています。
そこでよくあるのが、親が子に毎年110万円の現金を渡して相続税対策を図る方法です。
非常にシンプルな方法ですが、長く続ければ効果は十分あります。
ただ財産が多い場合は間に合わない可能性もあるため、もう少しひねりを加えてみましょう。
(1)贈与の金額を増やす
贈与の金額が110万円を超えると、課税の対象となってしまいますが、税金を払ってでも贈与した方がいい場合もあります。
それは財産が多くあり、多額の相続税の発生が予想される場合です。
仮に子へ310万円の贈与をすると、贈与税は20万円となり、適用される税率は10%となります。
※(3,100,000-1,100,000)×10%=200,000
これが相続税で多額の財産があるケースでは最高で55%にもなります。
よって10%課税されてしまっても、毎年10%であれば、トータルで考えても10%で済むことになります。
また520万円の贈与であれば、結果的に贈与税は52万円になり、額面に対して10%となります。(一定の金額ごとに20%,15%,10%が適用されます。)
このような金額にする方法もあります。
(2)相続人とならない親族(孫など)へ移す
相続税の計算では、死亡前3年分の贈与は認められず、相続税がかかる財産として計算し直すことになります。
(支払った贈与税は一定額精算します。)
しかし孫がいて相続財産を受け取らないのであれば、相続税の計算には関係ないので死亡直前まで贈与が有効になります。
そこで先ほどの110万円や310万円、520万円などの贈与を検討してみる価値はあります。
ただし遺言や生命保険などで財産を受け取り、相続税の計算に関係があることになってしまうと死亡前3年分の贈与は相続財産となってしまうので注意が必要です。
(3)非課税を知っておく
扶養義務者からの生活費や教育費は贈与税がかかりません。
これらの費用を孫へ贈与した場合も非課税となります。
これらの贈与は110万円の贈与とは別枠で贈与ができるので、先にこちらを考えるべきです。
具体的には、日常生活での費用は当然ですが、学習塾の月謝、学校の入学金・授業料、結婚費用、出産費用なども含まれます。
ただし常識的に考えて行き過ぎた贈与は課税される可能性もあります。
(4)特例による非課税を利用する
上記の教育資金、結婚・子育て費用は非課税ですが、特例による非課税制度もあります。
これは資金を信託銀行等へ預けておき、贈与を受ける者が領収書などを提出して資金を受け取るという方法です。
メリットとしては、もし贈与した人が死亡しても、非課税となる資金の引出しは続けることができます。(30歳まで。)
またこれらとは別に住宅を取得するための資金を贈与した場合の非課税制度もあります。
(この制度を受けるには贈与税の申告が必要です。)
なおこれらの制度には期間と金額が限定されているので確認が必要です。
(国税庁資料)
・住宅取得等資金の贈与
・教育資金の一括贈与
・結婚・子育て資金の一括贈与
(5)生前贈与の注意点
税務署による相続税の調査では、生前の贈与が適法に成立してるかを問われることがよくあります。
専門家に相談せず自分達だけで贈与を行っていると、成立してないことも多いと思われます。
その場合は、何年もかけて行ってきた贈与が全て無駄になり、相続財産として課税されてしまうことになります。
そこでお金に余裕がある人は納得がいかず、裁判まで起こすことになりますが、なかなか勝てないのが現状です。
贈与を税務的にも成立させるためには、少し手間が必要です。
まず贈与契約書を交わし、資金の移動は銀行の口座を使い、通帳と印鑑の管理は受け取った本人が行います。
贈与を受けた人が未成年の場合は、親権者である親が代わりを務めれば問題ありません。
なお贈与税の申告をしたからと言っても、必ず贈与が成立したとは言えないのですが、申告が必要であればもちろんしなければなりません。
また110万円以下で申告が不要でも、申告書を提出すれば受け付けてはもらえます。
これらの積み重ねにより、総合的に贈与の事実を判断されるので、安易に考えず慎重に計画的に進めていく必要があります。