税理士試験の受験

税理士試験の基本から合格する考え方までを説明しています。

税理士試験とは?

<目的>
税理士試験は、税理士としての必要な学識及びその応用能力を有するかを判定することを目的として国税審議会が行う試験です。

<試験科目>
会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目と、
税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法その他5科目)のうち3科目について行われます。

ただし税法に属する科目については、所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択しなければなりません。

また全ての科目を1度に受験する必要はなく、1科目ずつ受験することも認められています。

<合格基準>
合格基準は各科目とも、それぞれ満点の60%とされています。
ただし実質は合格者数がある程度限られている競争試験となっています。

難易度と合格率

会計科目の合格率は変動に幅があり、14%から数%前後で推移している現状があります。
税法科目は科目ごとに一定の傾向はありますが、およそ11~13%前後でしょうか。

特に大変なのが税法科目であり、裏を返せばおよそ88%の方が不合格になります。

これについては、税理士試験の受験をサポートする各専門学校では、実質的には20~30%ぐらいの競争率であると教えることもあります。

多くの受験生は勉強不足の状態で受験に挑むので、本当のライバルとなる受験生の数はもう少し減るという理屈です。

しかしここには大きな落とし穴があります。
例え実質的には4人に1人が合格する状態であったとしても、その4人はかなりの強敵なのです。

何年も受験しているベテランの方もいれば、受験に専念していて1科目だけを1日中勉強ばかりしている方もいます。

そのような猛者たちと戦うことになるわけですから、単純に実質的な合格率を出すことはできないのです。

正しくは合格率なんて「不明」なのが正解です。

過酷な税理士試験

この試験の特徴として、1科目ずつ受験できるという性質があります。
そして1度合格してしまえば、その合格は一生有効になります。

なので何年もかかるかもしれないけど、諦めずに受験していけば合格できるかもしれないと多くの受験生、又は受験を検討している方は考えます。

しかしその考えがある限り、実は1科目を合格することが実に大変になるのです。

もちろん税理士試験ほどの国家資格になれば、多くの方が真剣に勉強してきます。
そこで何かしら1科目を新たに受験することを考えてみましょう。

当然そこには既に受験をして不合格になって、再受験をしている方もいます。
むしろそのような方が多いのではないでしょうか。

そこを強引に割って入って合格を勝ち取らなければならないのです。
もし不合格になれば、今度は先輩、同期、後輩との戦いになるわけです。

みんなが頑張っているのは当たり前なので、次から次へと強敵が出てくる状態になっているのです。

形式的な合格率だけを見ていてもこの試験の本質は分かりません。
そう簡単ではないことは覚悟する必要があります。

短期合格は可能か?

では税理士試験において短期合格は可能なのでしょうか?
もちろん中には受験期間が2~3年程度の超短期間で合格された方もいらっしゃいます。

しかしそれを狙ってできるのは至難の技ではないかと思います。
それは先ほど述べたように1科目当たりの競争が激化しているからです。

各専門学校の設置コースを見ればよく分かりますが、再受験者用の上級コースというものがあります。

これは初めて受験する方向けのコースよりも、数多く設置されているのです。
専門学校も短期合格を売りにしてるところもありますが、そうであれば上級コースは廃止すればいいのです。

しかしできていません。
それは再受験する方が多いからです。

会計科目は何とか短期間で合格できるかもしれません。(それでも大変ですが。)
でも次に待っている税法科目がもっと大変なのです。

思っている以上に5科目を揃えることは苦労を伴います。
途中で挫折する方も多くいらっしゃいます。

ちなみに学歴はどうでしょうか?
早慶レベルの受験生の方も見てきましたが、高学歴だからと言って必ず短期で合格できる保証はありません。

この試験独特の勉強法が必要なので、大学受験とはやり方が違うような気がします。

東京税理士会が某専門学校に対して行った調査では、平均合格年数はおよそ9年(!)とのことです。(科目免除制度、いわゆる大学院を利用しない場合。)

平均ですから、10年を超えることも当たり前なはずです。
結論として、超短期合格を目指すより確実に6~7年で合格するとか、そういう現実的な目標を掲げた方がいいのではないかと思います。

科目選び

受験生活を長くしていると、とにかく合格が欲しくなってきます。
そこで何とか受かりやすそうな、学習ボリュームの少ない科目を選ぶという考え方も頭に浮かんできます。

しかし私は個人的に大反対です。
税理士の資格は合格して登録したら、周りからはプロとして見られるわけです。

やはり国税科目(法人税法、所得税法、相続税法、消費税法)から3科目選ぶべきです。
合格後の伸びしろは、税理士試験の受験科目がカギとなっています。

これは経験していないと分からないので何とも言いいようがないのですが、やはり合格してない科目は自分の中に大きな土台を築けないような感覚があります。

必ず後悔することになるので、受験する方はぜひ国税科目のみを選択して頂ければと思います。

学習ボリュームが少ないということは、ライバルもかなり習熟した状態で挑んできます。
またそうなると一つのミスだけで不合格になることもあり得ます。

学習ボリュームの多い科目では、一つのミスだけで不合格になることはありません。
地方税法などの受験はそれほどメリットを感じませんので、もう一度考え直してもいいのではないでしょうか。

多科目受験について

簿記論と財務諸表論は、同時に受験すると相乗効果がある。
これはよく聞く言葉です。

確かにその通りかもしれませんが、極力多科目受験は避けるべきという考えが、私の結論です。

今の税理士試験は、受験生のレベルがかなり高いと思います。
ネットで簡単に知識を手に入れられますし、1科目に集中する方も増えているのです。

このような状況での多科目受験は、デメリットしかないように思えます。
学生のように若くて時間もあり、何でも挑戦することが許される状況であれば思うようにやってもいいかもしれません。

しかし特に社会人の方であれば、1科目ずつを地道に取っていく方が、急がば周れという結果になると思います。

本当なら簿記論と財務諸表論も1科目ずつの受験をお勧めします。

独学は可能か?

税理士試験を独学で受験するという方法は、やめた方がいいと思います。
要するにお金の問題ではないのでしょうか?

もしお金が豊富にあれば、独学の方も専門学校で講座を受講しているはずです。
やはり独学ではお金をかけている方に勝てません。

会計科目は、優秀な頭脳を持っている方であれば何とかなるかもしれませんが、特に税法科目は独学は無理です。

専門学校に通っていてもなかなか合格できないわけですから、独学では尚更無理ではないかと思います。

学校選び・講師選び

正しい学校選びや講師選びなんておそらくないだろうと思います。

この世界では結果が全てです。
合格しないと意味がありません。

もし地味で目立たない講師であっても、理論の予想が当たれば「いい講師」だったことになります。

では分かりやすい教材や、分かりやすく教えてくれる講師はどうでしょうか?

簿記2級のような試験ではそのような選び方でもいいと思います。
しかし税理士試験は、自分の頭で考えなければ意味がないのです。

自分のレベルが上がれば、レベルの高い質問ができます。
そこで初めて講師の良し悪しが分かるのです。

教えてもらって何とかするのではなく、自分で知識を獲得する、いわゆる「肉食」になる必要があります。
むしろ教材や講師について、間違いや問題点を指摘できるくらいの力を自分で身に付けるべきです。

受験生は講師を選ぶことができますが、講師は受験生を選べません。
しかしもし特別クラスのようなものがあって、自分が受験生として選ばれる立場だとしたら、選ばれるだけの努力をしているでしょうか。
努力だけでなく結果を出せるでしょうか。

選ぶことばかり考えるのではなく、選ばれるという仮定の話しになってしまいますが、自分のことも考えてみると視野が広がるのではないかと思います。
いい講師を選んでも果たして合格できるでしょうか?

そうは言ってもどの講師がいいのかと気になってしまうかもしれませんが、1年という長い期間教わることになるので、相性で決めてもいいと思います。

評判のいい講師がいて、どうしても受講したいのであれば、気にすることが時間の無駄なのでその講師を受講すればいいと思います。

合格までの学習時間

TACのホームページでは合格に必要な学習時間の目安が掲載されています。
これには理論の学習時間が含まれていないとなっています。

また講義の時間は含まれているとのことです。
しかしそれにしても少なすぎます。

この試験はみんなで一斉に勉強を始めるわけではないのです。
自分が勉強を始めても、既に勉強をしている先輩の方々も多くいるのです。

その中で戦っていくことになるわけですから、この2~3倍勉強して当たり前です。

では時間をかければ合格できるのでしょうか?
例えば時間をかければオリンピックで必ず金メダルが取れるでしょうか。
時間をかければ必ず甲子園で優勝できるでしょうか。

大切なことは正しい方向性で勉強することです。
そうすれば結果として勉強時間も増えていきます。

要するに税理士試験では勉強の質、量共に高いレベルにあることが必要とされるのです。
時間だけにこだわるのであれば、勉強の内容も見直してみましょう。

簿財のポイント

簿記論と財務諸表論は同時に受講される方も多いのですが、まずは簿記論が基本となります。

そこで簿記論攻略のポイントとして、
・仕訳
・総合問題
・簿記一巡の手続き
を挙げてみます。

言われてみると当たり前のことに思えます。
しかしこれを極めたと言えるまで勉強できたでしょうか?

もちろん他にも細かいことはあるかもしれませんが、この軸がブレていると総合的な実力が付きません。

特に簿記一巡の手続きは、いつでもに頭の中に置いておかなければなりません。
体に染み込むまで練習する必要があります。

次に財務諸表論ですが、計算はやはり総合問題を何度も解くことがポイントです。
では会計理論ですが、これはお金で買った方が早いです。

つまり他の専門学校の(直前期の)模擬試験を買うのです。
もちろん理解も必要ですが、問題と解答を多く知っている方が圧倒的に有利なのです。

お金はもったいないかもしれませんが、さっさと買ってしまった方が早いと言えます。
当然自分が通っている専門学校の模擬試験を何度も復習することが前提ですが、他校のものにも手を出した方がいいのではないかと個人的には思います。

理論はルールブック

税法科目の受験では、理論暗記に悩んでいる方も多いはずです。

その前に本当に暗記をする必要があるのか?という疑問もあります。
確かに間違ったことを書かなければいいのですが、実際の本試験ではやはり覚えておいた方がスムーズに解答を書けると思います。

よって理論を暗記するという前提で理論について述べますが、理論とはルールブックに過ぎません。

そうなると理論攻略について考えるべきことは大きく3つあります。

・まずなぜこのようなルールがあるのか?
・そのルールとはどういうものなのか?
・そのルールを適用するとどうなるのか?適用を受けるにはどうすればいいのか?又は適用を避けるにはどうすればいいのか?(要するに税理士としての実務的な適用の話しです。)

これが分からずに、ひたすら文章を暗記ばかりしていても、何だかよく分からない状態で本試験を迎えてしまうことになります。

細かいことを言い出すとキリがないのでこれ以上は説明しませんが、ルールをよく知って使いこなせないと、本当の理解は得られないと思います。

例えば自分が知らないスポーツのルールブックを丸暗記して、試合をしたとしても実戦ではなかなか対応できないでしょう。
それがヒントです。

国税庁のホームページは見て当たり前

税法科目の受験では、国税庁のホームページを見ることは必須ではないかと思います。
もちろん範囲が広いので、時間の無駄になる可能性もあります。

しかし質疑応答事例から出題されることもあり、その存在を無視するわけにはいきません。
何しろ無料で見れるわけですから、当然ライバルも見ているはずです。

専門学校の模擬試験も、質疑応答事例をモチーフにして問題が作成される場合もあります。
近年ではそれほど重要になってきているので、見る習慣はつけておくべきです。

大変なのは十分承知しています。
ただ税理士試験に勝利できる人は、地味でも大変なことを成し遂げた人なのです。
天才ではありません。