離婚は日本においても増加の傾向にあります。
子どもや今後の生活のことなど、考えるべきことは多くありますが、税金については後回しになってしまう場合もあるのではないでしょうか。
そこで離婚の際に影響がある税金について考えてみました。
社会保険についても概要ですが触れています。
1 財産を受ける人の税金
(1)財産分与
①贈与税
離婚に伴う財産分与に対する贈与税は基本的にはかかりません。
婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共有状態にあるという考えから、財産分与はその清算と考えます。
よって婚姻前からもともと相手が所有していた財産の分与を受けた場合は、その財産については贈与税の対象となります。
なお離婚前に居住用不動産等を取得した場合は、贈与税の配偶者控除の適用が受けられる可能性もあります。
(参考)
配偶者控除
②不動産の取得
財産分与により住宅などの不動産を取得した場合、まず登録免許税は必ずかかります。
次に不動産取得税ですが、登記の原因が財産分与であれば、通常は2分の1部分を取得したと推定し、不動産の半分の金額に対して不動産取得税を計算します。
また中古住宅については軽減措置があるため、結果的にはかからない可能性もあります。
ただし既に持分がある場合は推定取得の取り扱いはありません。
③住宅ローン減税
財産分与で住宅を取得し、住宅ローンも抱えることになった場合は、要件を満たせば住宅ローン減税の適用を受けることができます。
ただ住宅ローンを受けるためには金融機関の審査・承認も必要ですし、簡単ではないと思われます。
また親族からの取得については適用がないため、離婚後(他人になった後)に取得する必要があります。
(2)慰謝料・養育費
慰謝料と養育費については基本的には税金はかかりません。
2 財産を与える人の税金
(1)譲渡所得
離婚に伴う財産分与(不動産等)については、所得税法では譲渡所得に該当します。
詳細な計算が必要ですが、譲渡益が出れば一定額の控除の特例が受けられますし、譲渡損が出れば損益通算・繰越控除の特例が受けられます(給料などの所得に対する税金が安くなります)。
ただし身内への譲渡では特例の適用がないため、離婚後(他人になった後)に財産分与を行う必要があります。
またそもそも離婚によって大きい財産が動く場合は、離婚協議書や離婚公正証書を作成しておいた方が望ましいと言えます。
(2)住宅ローン減税
離婚によって居住用不動産を相手に分与した。しかし住宅ローンは自分が支払っている。
このようなケースでは住宅ローン減税は受けられなくなります。
これは居住をしていることが要件の一つとなっているので、引っ越した場合は適用を受けられなくなるからです。
もっとも居住用不動産の名義変更をする場合は、金融機関は通常残りの債務について一括返済を求めてくるので、思い通りにはできない場合が多いと思われます。
3 所得控除
(1)生命保険料控除
生命保険料控除の適用は、受取人が配偶者や親族であることが前提なので早めに受取人を変更する必要があります。
(2)寡婦(寡夫)控除
寡夫控除の適用は、扶養している子がいることが前提なので注意が必要です。
ただ寡婦控除については、扶養している子がいなくても合計所得金額500万円以下(収入が給料のみであれば6,888,889円以下)であれば適用があります。
(3)配偶者控除
配偶者控除など人に関する所得控除は12月31日の現況で判断します。
よって年の途中で離婚した場合、その年の配偶者控除は受けられないことになります。
(4)扶養控除
扶養控除も12月31日の現況で判断します。
また16歳以上が対象となっております。
扶養しているかどうかの判断は、養育費を支払っていれば扶養していると言えますし、一緒に生活していれば、それも扶養していると言えます。
よって父母のどちらも扶養控除を適用できる場合には、話し合っておく必要があります。
例えば大学生の子供が一人いるとします。
この子の扶養控除を適用できるのは、父か母のどちらか一方です。
父母の両者とも適用を受けることはできないのでご注意下さい。
4 社会保険
(1)加入
特にサラリーマンの配偶者(専業主婦等)は社会保険で優遇されています。
健康保険は、所得などの要件を満たせば夫の会社で加入している健康保険に加入できますし、国民年金は支払う必要がありません(第3号被保険者)。
つまり一切お金を支払うことがなく、社会保険に加入していることになるのです。
よって離婚した場合は、例えば専業主婦等であった場合は、国民健康保険と国民年金(第1号被保険者)の切り替えの手続きが必要です。
もちろん保険料を自分で支払うことになります。
(2)年金分割
平成20年4月以降に離婚があった場合は、第3号被保険者であった期間の加入記録について2分の1の分割を受けることができます(3号分割制度)。
これは相手の同意は必要ありません。
また離婚後2年以内に申請が必要なのでご注意下さい。
しかし平成20年4月以前の記録については分割の対象となっていません。
ただ相手の同意があれば以前の記録についても分割ができます(合意分割制度)。